神奈川新聞 平成18年2月20日 掲載 歯科コラム
口腔がんは、早期発見されれば、そのほとんどが完治します。特に、がんに変化しやすい「前がん病変」の段階で発見することが重要です。
その代表的なものに、白板症があります。歯肉や舌、口の中の粘膜に白斑ができ、ガーゼなどでこすっても取れません。表面が滑らかなものもあれば、盛り上がっているものもあります。
五十代から七十代の男性に最も多く見られ、数%ががんに進行します。
原因としては、たばこ、過度の飲酒、虫歯のとがった部分の刺激などが考えられます。
早期がんや前がん病変の段階で治療を受ければ、再発や口の機能障害はほとんどありません。しかし、この段階で治療を受ける人はわずかです。それは、自覚症状がほとんどないことや定期的な歯科受診の習慣がないことなどが原因として考えられます。
また、ほとんどの市区町村は口腔がん検診を行っていないのが実情です。口腔がんの多くは直接目に見える部分にできるので、定期的に歯科検診を受ければ、比較的容易に発見できます。そのため歯科医師会が独自に口腔がん検診を実施するところが増えています。
横浜市歯科医師会でも口腔外科専門医(横浜市大、鶴見大)による「無料口腔がん検診」を年三回行っています。市民の関心も高く、二月八日の検診には、定員を超える申し込みがありました。検診の結果、七十一人のうち前がん病変の疑い二例、良性腫瘍の疑い四例が見つかりました。
次回の口腔がん検診は、六月に予定しています。
また、身近なところで口腔がん検診を受けられず「口内炎が長引いている」「口の中にしこりがある」「舌が痛い」「あごの下のリンパ節がはれている」「のみ込むときに違和感がある」などの悩みがある場合、最寄の歯科医院での定期検診も早期発見に有効でしょう。
高齢化社会を迎え、口腔がんが増加傾向にあります。歯みがきのときに口の中の粘膜も観察するようにしましょう。また、健康で生きられる期間を延ばすため、口の中を清潔にし、虫歯や合わなくなった入れ歯などを放置しないようにすることが大切です。 <隔週掲載>
|
|