神奈川新聞 平成19年5月14日 掲載 歯科コラム
歯科で用いられる金属の中には、まれにアレルギ−症状を引き起こすものがあります。金属アレルギ−が関与するとされる主な疾患には、異汗性湿疹、掌せき膿疱症、扁平苔癬などがあります。
異汗性湿疹は手のひら、足の裏に小さな水ぶくれが多発する原因不明の疾患です。多汗な人に多く、金属アレルギ−が原因である場合があります。
掌せき膿疱症は主に中年の人の手のひら、足の裏に無菌性で、膿んだような白〜灰色のプツプツができて慢性症状になります。発症原因には扁桃炎、虫歯、歯周炎などの慢性病や金属アレルギ−の関与が考えられています。
扁平苔癬は口腔粘膜や皮膚に生じます。口腔粘膜の場合は白色の網目状の模様が現れます。原因は不明のことが多いのですが、特に口腔粘膜に生じる場合は歯科金属に対するアレルギ−のこともあるほか、近年はC型肝炎との関連も注目されています。
金属アレルギ−かどうかを調べるには、パッチテストを行います。方法は数多くの金属小片を使用します。これを皮膚(主に背中)に四十八時間張り付け、除去直後とその二十四時間後に皮膚の状態を判定します。(場合により一週間後もあります)。
通常は浮腫や浸潤を伴う紅斑(盛り上がってかたい赤み)を生じた場合に陽性とします。
治療は異汗性湿疹の場合、多汗症を伴うときはその治療を行いますが、金属アレルギ−を伴うときは原因の金属を除去することで回復することもあります。
掌せき膿疱症は慢性病の除去で症状がよくなることもありますが、歯科金属の除去で回復することはまれなようです。
扁平苔癬の場合は歯科金属を除去することで口腔内の発症はよくなりますが、皮膚の扁平苔癬は回復しないという報告が多く、まだ結論が出ていません。
いずれにしても、金属アレルギ−ありと診断された場合に、その歯科金属を除去すべきか否かというのはなかなか難しい問題です。お金と時間をかけて除去しても、症状があまりよくならない場合もあり、慎重な対応が必要です。
(藤沢市民病院・皮膚科 小松 平)
<おわり>
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