神奈川新聞 平成18年8月21日 掲載 歯科コラム
歯周病は、歯と歯茎の間に入り込んだ細菌が、歯を支える組織を壊していく病気です。
最近の研究では、歯周病菌の標的は歯茎だけではないことも分かってきました。血管系の病気、糖尿病、早産や低出生体重児、肺炎との関係などが明らかにされつつあります。
たとえば、二十〜三十歳代の喫煙者の男性に多く発症するバージャー病。手や足の抹消血管が詰まり、ひどくなると指先などが腐ってしまう血管系の難病で、国内には約一万人の患者さんがいるといわれています。
バージャー病の患者さんを調べて見ると、いずれも中程度から重度の歯周病であり、手足の病巣から採取した血管組織から歯周病菌が見つかっています。歯周病との密接な関係が疑われているのです。歯周病菌は血液中に入り込み全身へと運ばれます。そして抹消血管を詰まらせ組織を壊死っせるのです。
動脈硬化。ここにも歯周病菌が!既に脂肪やコレステロールが付着して詰まりかけた血管からも、歯周病菌がみつかっています。これが動脈硬化を悪化させ、狭心症や心筋梗塞などを引き起こすといわれています。
糖尿病と歯周病菌の関係も、互いに病気を悪化させる要因になっていることが分かってきました。歯周病治療を行うと血糖値が改善したりするのです。歯茎の炎症で生じるサイトカインという物質が関与していると考えられています。
妊産婦では、このサイトカインが、子宮収縮を促し早産や胎児の成長不足を招き、低出生体重児の原因となったりする可能性があるといわれています。
日本人の死因の第四位を占める肺炎は、多くの高齢者の命を奪ってきました。誤嚥(誤ってのみ込む)で歯周病菌を気管に吸い込むことで、発症するケースが多いことが分かっています。口腔ケアや歯周病の治療をすると、誤嚥性肺炎が明らかに減ることは容易に理解できるでしょう。
日本人の中高年の約八割がかかっているという歯周病。このように、全身をむしばむ怖い病気でもあるのです。
半年に一回は、歯医者さんで歯茎のチェックを受けることをお勧めします。
<隔週掲載>
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