神奈川新聞 平成18年9月4日 掲載 歯科コラム
歯周病の治療は、原因を取り除くことと破壊された歯を支える組織を取り戻すことの二つです。原因を取り除く治療は、進行度合いによって違ってきます。
初期は、まだ頑固なバイオフィルム(歯垢の一種)が形成されていないので、歯磨きだけでも治すことができます。
中等度になるとバイオフィルムや歯石が形成されて、歯を支える組織の破壊が始まり、歯と歯茎の間にある歯周ポケットの深い所では細菌の作る毒素などで歯根表面が汚染されてきます。
この段階になると歯磨きだけでは治らず、歯科医院での治療が必要になってきます。歯の表面から歯石を取り除いたり、歯周ポケットの深い所の歯根表面の清掃が不可欠です。
さらに重度の場合には、歯肉を切開して歯根を露出させ、徹底的な細菌と汚染物資の除去を行います。
しかし、原因を取り除くだけでは歯を支える骨は元の健康なレベルまで戻るわけではありません。
そこで最近、失われた骨組織を再生させる新しい方法(再生療法)がいくつも開発され、注目をあびています。歯の周りの失われた組織の上に特殊な膜を張って、歯を支える組織がゆっくりできあがるのを待つ方法は「組織誘導再生」の英語の頭文字を取ってGTR法と呼ばれ、ある程度の効果が確認されています。
また、特殊なタンパク質を使うと組織の再生が促されることが分かり、応用が始まっています。
それでは歯周病の予防はできるのでしょうか。歯周病は、生活習慣病の一つで、日常の生活習慣の改善がとても大切です。
例えば禁煙。ニコチンは、歯肉の血管を収縮させ、炎症を進行させたり回復を妨げたりします。喫煙は歯周病の最大のマイナス要因です。
よく噛んで食べること。唾液には抗菌物資が多く含まれています。
睡眠を十分にとってストレスをためないこと。体の抵抗力を高めます。
このような生活習慣の改善なくしては、歯周病の治癒は期待できません。そしてまた、自己管理と予防に勝る治療も決してないのです。
市町村では歯周疾患検診事業を行っています。横浜市でも今年四十歳・五十歳・六十歳の方は五百円、また七十歳の方は無料で歯周疾患検診を受けることができます。
詳しくは地域の歯科医師会におたずねください。
<隔週掲載>
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