神奈川新聞 平成18年10月2日 掲載 歯科コラム
今回は、最新の医療費削減法をお話しします。健康を支え、医療費を減らすヒントは、皆さんの口の中にあったのです。
新聞、雑誌、テレビなどで、食べ物のことが何と多く取り上げられていることでしょう。自然食ブームは衰えをみせません。健康な生活を送るために欠かせないものの一つが食生活です。
二○○五年六月には「食育基本法」が制定され、「子供たちが豊かな人間性をはぐくむために、何よりも食が重要である」とし、また「国民運動として食育にとりくむことが国民の課題」であるとさえいっています。しっかり食べることが健康づくりの第一歩なのです。そのためには歯が重要なのは言うまでもありません。
では歯の数が少なかったり噛み合わせの悪い人は、本当に病気にかかりやすくなるのでしょうか。
東北大学の渡辺教授は「歯は身体だけでなく、心とも深くかかわっている」とし、歯と呼吸器、消化器、脳との関係を指摘しています。口の中が不衛生な人は肺炎になりやすく、噛めない人は胃腸が弱いといいます。
また、高齢者で噛み合わせが悪いと脳の血流量が減り、脳委縮がみられます。「認知症の予防には歯の数を保つことが大切だ」と述べています。
ほかの研究では、歯の数が少なくてもしっかりした入れ歯を使っていれば認知症が抑えられるという結果も出ています。
医療費について兵庫県などで調べたところ、歯の数の少ない人や噛み合わせの悪い人は、全身的な病気により多くの医療費を使っていることが分かりました。七十歳以上で歯が二十本以上ある人の医療費は一カ月平均一万七千円。そうでない人は二万二千円ト、30%近くも余計にかかっていたのです。
気管支炎などの呼吸器系の病気、うつ病などの精神神経系の病気では、歯の数が二十本以上ある人の方が医療費が安く済んでいることも分かっています。
国は赤字減らしのために、高齢者の窓口負担金の増加などの、その場しのぎの医療費抑制策を次々と打ち出してきています。
しかし、医療保険制度という素晴らしい財産を守る本当の近道は、口の健康を保ち明るい食生活を送ることなのではないでしょうか。自ら健康増進を図り医療費の無駄遣いを減らしていくために、もう一度「口の;健康」を見直してみませんか。
<隔週掲載>
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