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口の健康 体の健康 −20− 口腔がん 切らずに治す最新治療

神奈川新聞 平成18年11月20日 掲載 歯科コラム
 
 わが国における口腔がんは、胃がんや肺がんに比べると発生数は少ない(がん全体の数%)ですが、ほかの部位のがんに比べて切除量が小さいにもかかわらず、手術後の機能障害は発音障害、咀嚼(かみ砕く)障害、嚥下(のみ込む)障害など、非常に大きいものがあります。
 また、決定的な違いはほかの部位のがんでは見られない、手術による顔の変化や手術の傷跡が残ることで、社会生活を送る上で大きな問題が生ずることです。
 現在口腔がんの治療は早期のもの(二〜三センチ程度で、小さくて転移のないもの)であれば、手術のみでも放射線治療のみでも機能障害はなく、ほぼ完治します。
 しかし、問題は進行がん(大きく、転移するがん)の治療です。一般には放射線療法、化学療法(抗がん剤治療)、手術などの併用療法となり、成功しても大きな機能障害が残ることもあります。
 そこでこれからの口腔がんの治療はいかにがんを切らずに治すかが、ほかの部位のがんと比べて強く求められています。
 近年、新しい治療法の一つとして超選択的動注化学療法(がんに栄養を補給している動脈だけに、カテーテルを挿入して抗がん剤を集中的に注入する方法)が注目されています。
 この方法は浅側頭動脈(耳の前の動脈)からカテーテルを挿入する方法で、わが国で開発されたものです。放射線治療と毎日、併用することが可能となり、従来の治療法と比べ、安全かつ、がんを殺す高い効果が得られるものです。
 名古屋大学付属病院歯科口腔外科でのデータでは、口腔がんの進展症例で、この治療法を手術の前に行い、手術後、切除した腫瘍を病理的に検査すると、約90%の患者さんでがん細胞がなくなっていました。
 このような結果を基に、最近ではこの治療法を用いることで、進行がんでも切らずに完治している方も増えてきています。
 現在、県でこの新しい治療法を行っているのは横浜市立大学付属病院歯科口腔外科だけです。しかし、今後普及して一般的になる治療法と期待されています。 (横浜市立大学医学部教授・藤内 祝)
<隔週掲載>
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