神奈川新聞 平成18年12月4日 掲載 歯科コラム
「児童虐待の相談、連続の三万件超最多を更新」「先生の三割は知らなかった。児童虐待の通告義務」など新聞に取り上げられた事件です。
このような児童虐待のニュ−スの背景には二○○四年十月施行の「改正児童虐待防止法」で、発見者に虐待の確信がなくても、その疑いがある場合には通告を義務付けられたことがあります。私たち医療関係者も、早期に発見し通告するよう求められています。
子どもへの虐待は、身体的虐待により死に至るようなことを思い浮かべますが、その内容により@身体的虐待A性的虐待Bネグレクト(養育放棄)C心理的虐待−の四種類に分けられています。
横浜市児童相談所(中央・南部・北部)の二○○四年度事業概要では、児童虐待全体が八百三十七件。その七割を身体的虐待とネグレクトが占めています。
私たち歯科医が注目しているのは、このネグレクトです。ネグレクトされている子どもたちは、満足な食事も与えられず、歯磨きもさせてもらえない状態で、虫歯になっても治療を受けられません。
東京都では二○○二年に都歯科医師会の協力で被虐待児童の口腔内検診を行いました。ゼロ歳から十二歳までの百七十人の被虐待児童と一般の児童を比べたところ、一人平均の虫歯の数は三倍以上で、治療率は二〜三割以下という結果でした。
この結果から、虫歯が多く歯科治療もされていない子どもは、虐待されている可能性があることが分かりました。
全国でも歯科医師会の児童虐待への取り組みが積極的に進められています。千葉県歯科医師会が歯科医による通報システムをつくったり、神奈川県歯科医師会でも「子ども虐待対応マニュアル」を作成したりしています。
しかし、児童虐待の防止や解決には想像を絶する難しさがあります。私たち医療従事者は福祉関係者、保健所、地域の子育て支援機関、学校、行政機関などと密接な連携を保って活動しなければなりません。
歯科医師会は今やっと、そのスタ−ト地点に着いたばかりです。次回は歯科医が診察した児童虐待例をお話しします。
<隔週掲載>
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