神奈川新聞 平成19年1月8日 掲載 歯科コラム
お子さんの指しゃぶりが、歯並びが悪くなる原因のひとつだということをご存じですか。生後二〜三カ月ごろから、指しゃぶりが始まります。超音波検査で調べてみると、すでにお母さんのおなかの中でしている子さえいます。
赤ちゃんは生きていくために口に触れたものなら何でも吸うという、本能的な機能を持っています。ママのおっぱいを吸うことにより安らぎを感じるようです。指しゃぶりも五感の発達の一過程なのです。このころまでは発達期のごく自然なことととらえてください。注意も必要ありません。
しかし、三〜五歳ごろまで指しゃぶりを続けていると、上下の前歯の間にすき間があいたり(開咬)、上の前歯が出てきたりして(出っ歯)、歯並びに悪影響が出てくることがあります。
指しゃぶり卒業の目安は乳歯の奥歯が生える二歳半〜三歳くらいです。
幼児期後半(五歳ごろ)以降も指しゃぶりが自然に消えない場合は、積極的にやめさせるようにした方がいいでしょう。開咬や出っ歯になると上下の唇が閉じにくくなり、口元の感じもだらしなくなります。いつも口で呼吸するので、口の中が乾燥し虫歯や歯周病になるだけでなく、ぜん息やアトピーのリスクも高まります。
また、上下の前歯のすき間に舌をいれる癖が生じてくることが多く、サ行、タ行、ダ行、ナ行、ラ行などの発音が不明瞭になり、舌足らずな印象のしゃべり方になります。こうした害が、成長発育に伴ってさらに骨格性の不正なかみ合わせを助長するという悪循環に陥ります。
生活環境の変化からくるストレスや緊張、不安、欲求不満を和らげるための行為として行っている場合もあり一概にしかってやめさせるのは考えものです。子どもの精神発達に合わせて理解をさせ、ゆっくりと自覚させてください。指を口にもっていったら名前を呼ぶなど、お母さんをはじめとした周りの家族が根気よく注意していくことが大切です。
指しゃぶりは、福祉保健センターでの乳幼児健診や歯科受診の際に指摘されることが多いようです。頑固な指しゃぶりによって、歯並びや口元に影響が出ている場合には、かかりつけの歯科医に相談してみてください。
<隔週掲載>
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