神奈川新聞 平成19年4月16日 掲載 歯科コラム
前回に続き、口腔がんの話です。世界のがん死亡率で口腔がんは六位と上位を占めており、その八割が南アジアの発展途上国に集中しています。
NPO法人アジア対口腔がん協会(AFOC)が一九九五〜九八年、スリランカで行った調査によると、ビンロウという木の実やかみたばこをかむ習慣が発症原因の一つであると突き止めました。
わが国でもガムたばこのような無煙たばこの一種が販売されており、ニコチン依存症や口腔粘膜病変の出現が報告されています。
EU(欧州連合)では発がんの危険性から既に無煙たばこが発売禁止になりました。米国でも口腔がんが多発して集団訴訟が起きているのが現状です。それにもかかわらず、日本ではガムたばこが新製品として販売されているのです。
厚生労働省の研究班のまとめによると、がんで死亡した男性の約40%、女性の約5%がたばこが原因であり、年間八万人に上るといいます。
喫煙ががんのほか、虚血性心疾患など多くの病の原因の一つであり、受動喫煙も含めて健康に悪影響を及ぼすことは近年の研究からも明らかです。
口腔はたばこの煙が最初に通過する部位で、粘膜に病変を起こしやすいのです。口を開ければ自分で見える部分も多く、異常を発見しやすいところです。喫煙の習慣は数十年を経て本人と周囲の社会を病苦に追いやる可能性があることがはっきり分かっています。異変に気づいたら、なるべく早く専門医を受診することをお薦めします。
また、次代を背負う若者が喫煙を覚える前に食い止めるのが真の予防医学といえましょう。そして喫煙が習慣になってしまった若者を愛情をもって「卒煙」させることが大切です。
(鶴見大学歯学部長・瀬戸ユ一)
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横浜市歯科医師会(中区相生町)では、二十五日、専門医による無料口腔がん検診を行います。詳しくはрO45(681)1553。
<隔週掲載>
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