神奈川新聞 平成18年3月20日 掲載 歯科コラム
「寝たきりの老後はやだなあ・・・」。誰もが漠然と考えることではないでしょうか。寿命が延びるにしたがって、人生の中で介護の必要な時間も当然長くなってきています。
これまで家庭の過重な負担に頼ってきた介護も、介護保険が定着したことで、社会全体で高齢者の面倒をみていく形に変わってきました。しかし、その分、公的負担はうなぎのぼりです。そこで今回、「介護予防」の考え方が導入されることになったわけです。
「口腔ケア」は耳慣れない言葉ですが、食べるための口の機能訓練と、口の中の清掃を行うことを指します。四月からの介護保険改正により、介護予防の事業の中で重要なサービスの一つに位置づけられました。どうしてかというと、「食べる機能を維持することが、生活意欲や生活の質の向上につながる」ことが分かってきたからです。
すでに昨年からモデル事業として積極的に口腔ケアを実施している介護施設の一つを紹介しましょう。横浜市神奈川区に「若竹大寿会 横浜市片倉三枚地域ケアプラザ」があります。二○○五年四月から口腔ケアを実施し、通所者のうち六十人以上がこの口腔ケアの指導を受けています。担当するのは口のケアの専門家である歯科医師・歯科衛生士と特別な教育を受けた施設職員です。
実際の口腔ケアの流れは@食前に舌や口の周りの筋肉の簡単な機能訓練(健口体操)A食後に口や入れ歯の清掃B最後に洗口剤でうがいをして仕上げとなります。時間にして二十分ほどで、自宅でもなるべく実践しても;らいうように指導します。
「くちの動きがよくなって食べやすくなった」「食べ物が口からこぼれなくなった」「のみ込みやすくなり、むせが減った」などの効果があがっています。
プラザの口腔ケアの前後には、必ず歯科医師による検診や指導があります。歯科治療やリハビリを受けることによって、介護予防の効果はさらにあがります。 <隔週掲載>
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