神奈川新聞 平成18年5月15日 掲載 歯科コラム
障害者が地域で普通に暮らせるように歯科医も長年にわたって努力してきました。しかし、障害者の場合、歯を削る機器に恐怖心を覚え、治療が進まないことも見受けられました。
そこで、障害者向けの歯科治療の研修を受けた各地の歯科医師が一次医療機関の役割を担い、二次医療機関の「専門センター」とともに障害者の恐怖心を取り除きながら治療を行っています。それでも難しいケースが出てきます。その場合は、神奈川歯科大学付属病院などの三次医療機関に依頼し、完全に意識もなく、体がまったく動かない全身麻酔を施し、歯科治療を行うことがあります。
全身麻酔は今や非常に安全性が高いものとなっています。日本麻酔学会の行った調査によれば、麻酔中の死亡率は十万人に三人ほどですが、その原因の多くは大手術など、手術そのものと考えられています。
したがって、単に歯科治療を行うための全身麻酔の危険性は、決して高いものではないといえるでしょう。
全身麻酔をかけ、安全で確実な歯科治療が行えることは、障害者自身にとっても、その家族にとっても朗報ではないでしょうか。
障害者を対象とする治療以外にも、全身麻酔をかけて行う場合があります。全身麻酔をかけられても何も分からないうちに済んでいたら、などと考えたことはありませんか?
次のような症状@嘔吐反射が強いA歯科治療に極度に恐怖感があるB長時間口を開けていられないC難しいインプラント(人工歯根)手術のケース−などには、全身麻酔を用いて治療を行うことがあります。
このような全身麻酔での歯科治療は、歯科口腔外科のある総合病院や歯学部や医学部の付属病院で行われています。障害者治療と異なり、場合によっては保険が利かないことがあるので、まずは担当医とよく相談し適切な施設を紹介してもらいましょう。(横浜船員保険病院歯科口腔外科部長・堀本 進) <隔週掲載>
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